子どもが学校に行けなくなったとき――まず考えたいこと
子どもが学校に行けなくなると、親御さんは大きな不安を感じます。
このままで大丈夫なのか。
無理にでも行かせた方がよいのか。
休ませているとますます行けなくなるのではないか。
学校で何かあったのか。
自分の育て方が悪かったのではないか。
さまざまな思いが浮かぶと思います。
子どもが学校に行けない状態は、単なる怠けや甘えとは限りません。
背景には、不安、抑うつ、発達特性、いじめ、友人関係、学業のつまずき、家庭のストレス、身体症状、睡眠リズムの乱れなど、さまざまな要因が関係していることがあります。
大切なのは、無理に登校させることだけを目標にするのではなく、まず子どもが何に困っているのか、心身の状態はどうか、家庭や学校との関係はどうかを整理することです。
学校に行けないことは、怠けとは限りません
子どもが学校に行けないとき、大人はつい「なぜ行けないのか」と理由を知りたくなります。
もちろん理由を考えることは大切です。
しかし、子ども自身も、なぜ行けないのかをうまく言葉にできないことがあります。
朝になるとお腹が痛くなる。
頭が痛い。
吐き気がする。
涙が出る。
制服に着替えられない。
玄関までは行けるけれど、そこから動けない。
学校のことを考えるだけで苦しくなる。
このような状態は、気合いで簡単に乗り越えられるものではありません。
「行きたくない」と言っていても、本人の中では「行かなければいけない」「でも行けない」という葛藤が起きていることがあります。
まずは、怠けと決めつけず、子どもの心身に何が起きているのかを見ていくことが大切です。
まず確認したい心身の状態
学校に行けなくなったときは、登校の可否だけでなく、心身の状態を確認することが大切です。
たとえば、次のような点です。
- 眠れているか
- 朝起きられるか
- 食欲はあるか
- 頭痛、腹痛、吐き気などがあるか
- 気分の落ち込みがあるか
- 不安や緊張が強いか
- いらいらが増えていないか
- 家では話せているか
- 好きなことを楽しめているか
- 友人関係で困っていないか
- いじめやトラブルがないか
- 勉強についていけているか
- ゲームやスマホの時間が大きく増えていないか
- 自分を傷つける行動や発言がないか
- 「死にたい」「消えたい」などの言葉がないか
学校に行けない背景には、身体症状として現れる不安や抑うつが隠れていることがあります。
また、昼夜逆転が進むと、さらに登校しにくくなることがあります。
ただし、生活リズムの乱れだけを原因と決めつけるのではなく、なぜリズムが崩れたのかも見ていく必要があります。
背景にあるかもしれないこと
不登校の背景は一つとは限りません。
たとえば、次のような要因が関係することがあります。
- 友人関係のトラブル
- いじめ
- 先生との関係
- 学業のつまずき
- 部活動の負担
- 集団生活の疲れ
- 発達特性
- 感覚過敏
- 不安症状
- 抑うつ状態
- 睡眠リズムの乱れ
- 家庭内の緊張
- 進級、転校、受験などの環境変化
一つの原因だけを探そうとすると、かえって見えにくくなることがあります。
「ゲームのせい」
「スマホのせい」
「友達関係のせい」
「親の育て方のせい」
というように、原因を一つに決めてしまうと、子どもが本当に困っていることに届かない場合があります。
実際には、いくつかの要因が重なって、学校に行く力が出なくなっていることがあります。
親ができること、避けたいこと
子どもが学校に行けなくなったとき、親御さんは何とかしようとして、つい強く問い詰めてしまうことがあります。
「なんで行けないの」
「いつになったら行くの」
「このままでどうするの」
「みんなは行っているのに」
こうした言葉は、親として心配だからこそ出てくるものです。
ただ、子どもがすでに追い詰められている場合には、さらに自分を責めたり、話せなくなったりすることがあります。
まずは、
「何がつらいのか」
「どこで困っているのか」
「体調はどうか」
「学校のことを考えると何が起こるのか」
を一緒に整理する姿勢が大切です。
避けたいのは、次のような対応です。
- 怠けと決めつける
- 無理やり登校させる
- 原因を一つに決めつける
- 親だけで抱え込む
- 子どもを問い詰め続ける
- ゲームやスマホだけを原因にする
- 「将来どうするの」と不安をぶつけすぎる
もちろん、家庭だけで対応するのは難しいことがあります。
その場合は、学校や医療機関、相談機関と一緒に考えていくことが大切です。
学校との関わり方
学校に行けなくなったとき、学校との関係を完全に切ってしまうと、戻るきっかけが見えにくくなることがあります。
一方で、学校からの連絡や登校の促しが強すぎると、子どもの負担になることもあります。
大切なのは、子どもの状態に合わせて、学校との距離を調整することです。
たとえば、
- 担任と連絡を取る
- 保健室や相談室の利用を相談する
- 短時間登校を検討する
- 別室登校を相談する
- 課題の量を調整する
- オンラインや家庭学習の可能性を確認する
- スクールカウンセラーにつなぐ
- 無理のない復帰の形を考える
などがあります。
ただし、登校だけを急ぎすぎると、子どもがさらに追い詰められることがあります。
まずは、子どもの心身の状態を整えながら、学校とどのようにつながるかを考えることが大切です。
医療機関で相談できること
医療機関では、学校に行けない背景に、こころや身体の不調が関係していないかを確認します。
たとえば、
- 不安が強くなっていないか
- 抑うつ状態がないか
- 睡眠リズムが大きく崩れていないか
- 発達特性が関係していないか
- 身体症状がストレスと関係していないか
- 自傷や希死念慮がないか
- 家庭や学校での負担が大きすぎないか
などを見ていきます。
必要に応じて、薬物療法を検討することもあります。
ただし、薬だけで学校に行けるようにする、というものではありません。
子どもの状態、家庭の状況、学校との関係を整理しながら、どのように安心できる生活を取り戻していくかを考えることが大切です。
また、親御さんだけで相談を始めることが役立つ場合もあります。
子ども本人がすぐに受診できない場合でも、まず保護者が相談し、状況を整理することで対応の方向が見えやすくなることがあります。
当院で大切にしていること
水道橋やまがたこころクリニックでは、子どもが学校に行けないという状態を、単に「登校できるかどうか」だけで見るのではなく、子ども本人の心身の状態、家庭、学校、発達特性、睡眠、気分、不安などを含めて整理することを大切にしています。
無理に登校させることだけを目標にするのではなく、まず何が子どもを苦しくしているのかを考えます。
必要に応じて、親御さんからお話をうかがい、子ども本人の話も聞きながら、家庭や学校でどのように対応していくかを一緒に考えていきます。
学校に行けない状態は、子どもだけでなく、家族全体にとって大きな負担になります。
親御さんが一人で抱え込まないことも大切です。
「学校に行けない理由がわからない」
「無理に行かせてよいのかわからない」
「子どもが話してくれない」
「発達特性や不安が関係しているかもしれない」
「親だけで相談してよいのか迷っている」
そのような段階でも、ご相談ください。
まとめ
子どもが学校に行けなくなったとき、まず大切なのは、怠けや甘えと決めつけないことです。
学校に行けない背景には、不安、抑うつ、発達特性、いじめ、友人関係、学業のつまずき、家庭のストレス、睡眠リズムの乱れなど、さまざまな要因が関係していることがあります。
無理に登校させることだけを目標にするのではなく、子どもが何に困っているのか、心身の状態はどうか、家庭や学校との関係はどうかを整理することが大切です。
当院では、子ども本人の状態だけでなく、家庭や学校との関係も含めて、どのように支えていくかを一緒に考えていきます。
